NTT の事業内容の幅が広すぎて調べるのが大変…
IOWN 構想も耳にしたけどよくわからない…
国内最大手の通信事業者である NTT は、かつて日本電信電話公社という公共企業でした。同様の企業には [2914]JT や [9020]JR東日本、[9022]JR東海などの JR グループがあります。
1985年に民営化して以降は電話網だけでなくインターネットプロバイダとしての役割や、IT システム導入やデータセンター運営などの IT 関連サービス、再生可能エネルギーの展開などの幅広い事業を展開しています。
NTT 単体で様々な事業を運営しているわけではなく、それぞれの事業を担う企業が集まる NTT グループの中心となり、持株会社的な側面も持っています。今回はそんな幅広い事業を展開する NTT の事業を掘り下げ、NTT の将来を担う IOWN(アイオン) 構想について考察したいと思います。
企業概要と事業内容
様々な事業を担う各社を深堀りする前に、NTT グループの中核を担う NTT についておさらいしましょう。
企業概要
会社名 | 日本電信電話株式会社 |
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本社所在地 | 東京都千代田区大手町一丁目5番1号 大手町ファーストスクエア イーストタワー |
設立 | 1985年4月1日 |
資本金 | 9,380億円(2024年3月31日現在) |
発行済株式の総数 | 90,550,316,400株 |
事業内容 | 総合ICT事業 地域通信事業 グローバル・ソリューション事業 その他(不動産、エネルギー等) |
従業員数 | 連結ベースの従業員数 338,467名(2024年3月31日現在) |
事業内容
上述した通り、NTT 全体としての事業内容は非常に幅広く、電話サービスのみならず IT インフラやサービス、データセンター、クラウドソリューションなどを提供しており、日本だけでなく世界的に見ても規模の大きい通信事業者です。
NTT グループの事業を俯瞰してみると次の図のようになっています。
NTT の収益のおよそ8割はIT関連事業となっており、電話と通信が中心の企業ではなくなりつつあります。中核を担う事業が今では、電信でも電話でもなくなっていることから NTT の社名変更が以前から取り沙汰されていますが、2025年6月に社名の変更が予定されています。
後述する次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」を世界的に展開していくことが構想されているため、事業の将来性や今後の方向性にも大きく関わりそうです。
1. 総合ICT事業
- NTTドコモは、日本最大手の移動通信事業者で、スマートフォンやモバイルインターネットサービスを提供しています。5G通信サービスの提供にも注力しており、モバイル技術の先駆者として高いシェアを誇ります。
- NTTコミュニケーションズは、データセンター事業、クラウドサービス、ネットワークソリューションを提供する企業です。企業向けにグローバルな通信ネットワークとクラウドインフラを提供し、デジタルトランスフォーメーションを支援しています。特に「NTT Comデータセンター」は、国内外に多くのデータセンターを運営し、安全で安定したITインフラを提供しています。
2. 地域通信事業(NTT東日本、NTT西日本)
- NTT東日本(東日本電信電話株式会社)とNTT西日本(西日本電信電話株式会社)は、日本全国で固定電話や光ファイバー回線「フレッツ光」などの通信インフラを提供しています。主に家庭や企業向けの通信サービスを提供し、インターネット接続やビジネスソリューションの基盤を担っています。
3. グローバル・ソリューション事業(NTTデータ)
- NTTデータは、ITサービスとシステムインテグレーションに強みを持つグローバル企業です。主に金融、医療、官公庁、企業向けに、システム開発や運用を行っており、日本国内外で広く活動しています。
デジタル革新の分野では、人工知能(AI)、ビッグデータ、IoTなどの最先端技術を活用したソリューション提供に力を入れています。
4. その他
- NTTアーバンソリューションズは NTT グループの持つ ICT 技術を活用した街づくりを行う企業で、少子高齢化や地方都市での中心市街地の衰退、インフラの老朽化などの社会課題を解決するための事業を展開しています。その他にもオフィスの賃貸や分譲マンション、ホテルの運営、維持管理なども行っています。
- NTTアノードエナジーは風力・太陽光などの再生可能エネルギー発電所の開発・運営や電力小売、需給バランスの調整などの事業を展開しています。また、発電所設備の保守・監視業務も担っています。
NTTの研究開発
電話と電信の企業から IT の企業へと軸足を移してきた NTT グループですが、今後はどのような戦略で成長していくのかを深堀りしていくために、NTT がどのような研究開発を行っているのかを見ていきましょう。
IOWN 構想
IOWN(アイオン)構想は光を中心とした革新的な通信技術を活用して、従来のインフラに比べて大容量かつ高速な通信を実現するための通信、情報処理基盤とされています。
具体的には、IOWN 構想を支えるフォトニクス(光)をベースとした通信網であるオールフォトニクス・ネットワーク(APN: All-Photonics Network)があり、現在の電気を使った通信を置き換えるような役割を担います。
従来のインターネット通信や電子基板上のチップ同士の通信、CPUやメモリなどのチップの中での通信は電気的に通信をしています。通信網の中を電気のONとOFFが高速に繰り返されることでデータのやり取りを行っています(平たく言うと)。IOWN 構想における APN では電気から光に置き換わることで消費電力を大幅に削減し、かつ高品質で遅延の少ない通信を実現することを目指しています。
そうしたネットワーク上に AI などを活用して、現在よりもさらに高度なシミュレーションの実現を目指すデジタルツインコンピューティング(DTC: Digital Twin Computing)と APN と DTC を制御、管理し最適化するコグニティブ・ファウンデーション(CF: Cognitive Foundation®)を加えた3つの要素で IOWN 構想が成り立っています。
3つの要素のうち、ネットワーク網であるオールフォトニクス・ネットワーク(APN: All-Photonics Network)は、2024年8月に台湾との間で世界初のネットワーク網が開通し、国内外にサービスを展開する段階にまで至っています。※1
高品質なネットワーク以外にも、近年の生成AIの進歩に伴って膨大な電力が必要になったことの解決策としても期待されています。2024年9月にはスリーマイル島原子力発電所を再稼働させ、Microsoft に電力供給を行うこと※2がニュースとなっただけでなく、Google も AI 開発に伴う電力調達で小型原発から電力調達することも明らかになりました。※3
※1 出典:NTTと中華電信、世界初のIOWN国際間オールフォトニクスネットワークを開通 ~日本と台湾間の約3000kmをわずか約17msecの超低遅延で接続~
※2 出典:米スリーマイル島原発 再稼働させマイクロソフトに電力供給へ
※3 出典:グーグル 原発から電力調達へ AI活用で電力需要高まる
デジタルツインコンピューティング(DTC: Digital Twin Computing)とコグニティブ・ファウンデーション(CF: Cognitive Foundation®)についてはまだ構想段階ではあるものの、DTC の分野ではヒトの思考シミュレーションの基盤としてLLM(大規模言語モデル)※4の tsuzumi が開発されています。
tsuzumi は 2024年11月に Microsoft Azure 上で提供を開始し※5、今後、DTC の実現に向けた開発と活用が期待されます。
※4 LLM(大規模言語モデル):大量のテキストデータの解析とコンピュータの自律的学習を行い、感情の分析や文章の要約、生成、質問応答、推論などの自然言語処理が行える汎用的なAI。ChatGPT は LLM を応用した AI。
※5 Microsoft Azure上でNTT版LLM「tsuzumi」を2024年11月20日に提供開始
NTT 株の投資戦略
NTTのような大型株は収益や配当、株主優待などが安定的で長期的に保有する銘柄としておすすめできます。その一方で株価の上下が少ないので、短期でキャピタルゲインを得る目的で保有する銘柄としてはいささか物足りないと言えます。
投資スタイルに応じて、どの規模の銘柄を保有するかを選ぶことは非常に重要です。
企業の規模や株の流動性によって大型株、中型・小型株といった分類をすることがあります。こちらの記事では投資スタイルや目的に合わせて、どの分類を選んだらよいかを解説しています。
まとめ
NTT の事業の概要や、今後の重要な戦略に位置づけられる IOWN 構想について解説してきました。IOWN 構想は特に難解な用語が多く、従来の通信技術がどのように変革し、どんな課題を解決するのかを読み解くのは骨が折れます。
しかし、このIOWN構想がどのように展開していくかが NTT の将来を占うと言っても過言ではないといえるでしょう。
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